東京園芸資材販売 株式会社
 
◎材料・用品の使い方
園芸薬品(剤型)について
講師:住友化学園芸 開発普及部 普及課 課長 草間 祐輔

家庭園芸用薬品(殺虫剤、殺菌剤、除草剤など)の剤型には様々な種類があり、
それらの特長を良く理解した上で使用用途にマッチした製品を選びたいものです。
今回は「乳剤」、「液剤」、「水和剤」、「エアゾール剤」、「スプレー剤」の話題をお届けします。



1.乳剤、液剤、水和剤

「乳剤」、「液剤」、「水和剤」は水で希釈して使用するため、作業の手間はかかりますが経済性は抜群です。
例えば「スミチオン乳剤」を標準倍率1000倍で希釈した場合
100ml(家庭園芸の標準的な容量)1本で100リットルの散布液が作れます。
これは単純計算で1回の散布に5リットルの噴霧器を使う人の場合、20回の散布ができる量ですから、
シーズンに7〜8回やったとしても、2〜3年使えます。
噴霧器は必要ですが、鉢数が多かったり、一回の散布面積が広い庭などに散布する場合には大変便利です。


★乳剤、液剤の違い

「スミチオン乳剤」に代表される「乳剤」は、水に希釈すると白くなります。
しかし「液剤」は白くなりません。
これは「乳剤」の有効成分は水に溶けないため、
製剤する過程でまず有効成分を一旦水と親和性の有る「乳化剤」で乳化するためです。
水に希釈すると白くなるのは、この乳化剤に包まれた有効成分が水中に分散し乳濁液となるためです。
つまり、有効成分が水に溶けない成分を希釈タイプに製剤する場合は「乳剤」の剤型となる、
と考えてよいのです。
「オルトラン液剤」のような「液剤」は有効成分自体が水に可溶なので、
「乳剤」を製剤する時のような「乳化剤」の使用は必要ありません。
したがって「オルトラン液剤」を水に希釈しても白くならず透明な水溶液となります。
ですから今まで「乳剤」を使い慣れていた人が初めて「液剤」を使用して「どうして白くならないんだろう、
この製品は効くんだろうか?」と疑問を持つ例もしばしばあります。


★「水和剤」は水に溶けるのか?

「水に溶けない」が正解です。
水和剤を水に溶かすと懸濁液ができます。
しかしこれは有効成分が水に溶けているわけではなく、粒子が水中で分散しているだけなのです。
ですからそのまましばらく静置すると徐々に沈降してゆくのが観察できます。
この粒子の分散性を向上させ、散布時の展着性を高める目的で添加するのがいわゆる「展着剤」なのです。


【「水和剤」を上手に希釈する方法】

まず少量の水と展着剤を加え、よく練って薬剤を水になじませ、その後水を加えて規定量にします。
「水和剤」を上手に希釈するにはこのような気使いが必要であるため、
最近ではより溶かしやすい液状タイプへの製剤開発、即ち「フロアブル」
(種類としてはこれも「水和剤」の一つです)タイプが徐々に増えてきています。
一昔前まで粉状だった「ダコニール」も「フロアブル」タイプの「ダコニール1000」になっています。


2.エアゾール剤

エアゾール剤は家庭園芸薬品ならではの剤型であり、
歴史的にも家庭園芸の発展とともにその需要が増加して来たと言えます。
その理由は何より「希釈の手間が不要」で、
いつでも必要な時に、しかも初心者でも「押すだけで手軽に散布できる」といった便利さからです。
鉢数が少なかったり、散布面積が狭い場面でのポイント使用はもとより、
ヘビーユーザーにとっても思い立った時にすぐ散布できる応急処置用として
家庭の常備薬的な存在と言えるでしょう。


★エアゾール剤の使用上のポイント〜「冷害」について〜

ところでこのエアゾール剤には近接散布による「冷害」に注意が必要です。
エアゾール剤の缶の中にはLPガス、GME(ジメチルエーテル)等の噴射剤(缶の中では液化ガスの状態)が
入っており、ボタンを押すと中の有効成分とともにこの液化ガスが缶の外に出てくる仕組みです。
この液化ガスが缶の外に出て気化する際に気化熱を奪うため、
植物の近くで噴射すると、温度が下がって「冷害」が起きることがあります。
ですから例えば「必ず約30cm以上離して散布」することが使用上のポイントです。
最近はこの「冷害」を軽減するために水性ベースのエアゾールも徐々に増えてきています。


★「冷害」を完全に解決したエアゾール剤も登場

「二重構造容器」の構造(ベニカX)



従来のエアゾール剤が抱えていた「冷害」を解決する目的で開発された製品が
「二重構造容器」のエアゾール剤(「ベニカX」)です。
この「二重構造容器」の外観は従来と全く変りないのに、缶の中の構造は全く違い、
薬剤の噴射方法も異なります。
即ち缶の中には薬液だけが入った、いわば風船のような「内袋」が入っており、
空いたスペースに充填された圧縮空気(窒素)が「内袋」を押し上げて、
中の薬液を缶の外に噴射する仕組みです。
「内袋」の中には噴射剤が入っていないため、「冷害」が起きることが全くないのです。
圧縮空気(窒素)は引火・爆発などの心配も皆無で、使用後はガスを抜く必要も無くそのまま廃棄できます。
さらに圧縮空気の圧力は内袋に均等にかかるため逆さ散布も不自由なくでき、
液残りしないという特徴もあります。
つまり「二重構造容器」は環境にやさしく、
植物、ユーザーにとってもストレスフリーな画期的なエアゾール剤と言えます。


3.スプレー剤の登場

エアゾール剤の次に開発され、現在では家庭園芸薬品の中で販売の伸びがめざましいのが
このスプレー剤です。
スプレー剤はエアゾール剤とともに家庭園芸ならではの剤型ですが、
欧米ではこれらは「READY TO USE」と呼ばれ、文字通り「すぐ使える製品」として
我が国同様に使用の伸びが目立つ製品群です。
その理由としては「ノンガスタイプで冷害がない」、「水性ベースで環境にやさしい」、
「身の回りの生活用品にも同様のスプレータイプの製品が多く、
身近」といったイメージが若者はもとより、
園芸の主たるユーザーである女性の指向にフィットしたことが考えられます。
ただエアゾール剤のようにボタンを押してさえいれば継続して散布できるのと異なり、
トリガーを引く手間はあります。
しかし、鉢数や散布面積が少なく「この量で十分、手軽で便利」といった初心者や
マンション住まいのユーザーにはなにより人気があるようです。





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